委員会資料
第7回JPドメイン名諮問委員会議事録
株式会社日本レジストリサービス 第7回JPドメイン名諮問委員会議事録
1. 日 時: 2003年11月19日(水) 15:00 ~ 17:00
2. 場 所: ホテルグランドパレス 3階『牡丹の間』
〒102-0072 東京都千代田区飯田橋1-1-1
Tel 03-3264-1111 Fax 03-3230-4985
3. 出 席 者: 後藤滋樹委員長
飯塚久夫委員
加藤真代委員
林一司氏(ニフティ株式会社システム事業部担当部長)
4. 陪 席 者: 佐野晋(JPRS 代表取締役副社長)
渡邊哲男(JPRS 取締役)
堀田博文(JPRS 取締役)
宇井隆晴(JPドメイン名諮問委員会事務局)
5. 次 第:
1. 開会
2. 議題
(1) 指定事業者制度の下での特定の状況におけるJPドメイン名とその登録者
の保護について
(2) JPドメイン名の登録管理業務における公平性・中立性について
(3) その他
3. 閉会
6. 資 料
資料1 JPドメイン名諮問委員一覧
資料2 第6回JPドメイン名諮問委員会における議論のまとめ
資料3 その他の論点について
資料4 答申骨子(案)
参考資料1 諮問書「指定事業者制度の下での特定の状況におけるJPドメイン名と
その登録者の保護について」
参考資料2 第6回JPドメイン名諮問委員会議事録
7. 議 事(◎は委員長、○は委員、●は JPRS 取締役および事務局の発言)
《開催の挨拶》
● 今回、松本恒雄副委員長、加藤雄一委員、潮田壽彌委員からは止むを得ないご
都合にてご欠席のご連絡をいただいている。加藤雄一委員からは、JPドメイン名
諮問委員会規則第11条に基づき、ニフティ株式会社システム事業部担当部長の
林一司様をその代理出席者としてお届け頂いており、4名のご出席となり諮問委
員会規則での議決定足数を満たしている。また、本日は、JPRSの役員として、副
社長の佐野、役員の堀田ならびに渡邊が陪席させていただくことをご了承お願い
申し上げたい。
《指定事業者制度の下での特定の状況におけるJPドメイン名とその登録者の保護について》
◎ 前回第6回の委員会では、ご提出を頂いた諮問事項につき、JPRSのご説明と質
疑応答ならびに意見交換を行った。本諮問事項については、前回委員会での合意
に基づき、2004年2月に予定している定例の諮問委員会にて答申を行う予定で審議
を進めていきたい。
前回挙げられた論点ならびにご意見について、事務局で資料としてまとめて頂い
ているので、まずは事務局よりこの資料につきご説明をお願いしたい。
資料2「第6回JPドメイン名諮問委員会における議論のまとめ」、資料3
「その他の論点について」および資料4「答申骨子(案)」につき、事務局よ
り説明が行われた。
○ 指定事業者の選定と登録継続の意思確認の各意思表示期間は、時系列的にどの
ような関係になっているのか。
● たとえば指定事業者が倒産するなどした場合、まずレジストリから登録者に対
して、どの指定事業者をドメイン名の移転先として選択するかを問う。次に、登
録者から移管先の指定事業者に関する意思表示がない場合には、JPRSが移転先と
して指定した指定事業者から、移管されたドメイン名の登録を継続するかどうか
の意思確認を行う、という手順を想定している。
○ 登録者の利便性ということはまず第一義的に尊重されるべきだと思うが、指定
事業者側としては、登録継続がサスペンドされた状態を維持して、その後アクシ
ョンを起こすことによる管理コストの増大が懸念される。
むしろ、JPRSが移転先として指定する指定事業者に移転することはせずに、当該
ドメイン名の本来の有効期限まではレジストリが管理し、意思確認がなければ廃
止するほうがよいのではないか。
○ その場合であっても、指定事業者の倒産や業務の停止などが発生してから、最
初の意思表示期間で移転先の指定事業者意思表示がないのであれば、当該ドメイ
ン名の本来の有効期限まで待つまでもなく廃止を行ってもよいのではないか。
最初の意思表示期間で移転・継続のいずれの意思表示もない場合、結局登録も継
続されず、利用もされない可能性が高い。むしろ当該ドメイン名を登録して利用
したいと考えている他のユーザのために有効活用できるのではないか。
ただし、この場合、逆に当該ドメイン名の本来の登録有効期限が意思表示期間よ
りも先に終了した場合には、期間の取り扱いの問題が発生する。
○ 移転先となる新たな指定事業者というのは、登録者の自由な意思表示による選
択によるものか?
● 最初の意思表示期間では、登録者からそのように意思表示してもらうべく問い
合わせを行う。この期間に登録者から意思表示がなかった場合にのみ、JPRSが移
転先の指定事業者を指定するというケースが発生することになる。
◎ その際にJPRSが指定する「移転先の指定事業者」というのは、そうしたドメイ
ン名の取り扱いの方法にあらかじめご賛同をいただいて、登録者に対して継続の
意思確認と、場合によっては廃止手続きのコストを負担することに同意している
指定事業者ということか。
● その通り。
○ 登録者が移転先についての意思表示をしなかった場合にJPRSが指定する移転先
に移すという方法は、登録者保護の観点からはすると一見手厚いようにみえるが、
一方で公正競争上は問題があるのではないか。
意図としては公共的なものだとしても、特定の指定事業者を指名することは不公
平に見えてしまう可能性があると思う。登録者保護の観点から手厚い対応をする
のであれば、特定の移転先を指定することはせずに、登録者の意思確認そのもの
について回数を重ねる、または、指定事業者の情報リストを提供するといった方
向で行うべきではないか。その結果、意思確認ができなければ廃止するというこ
とで問題ないのではないか。
○ 指定事業者の立場からしても、JPRSから指定された場合、登録継続の意思確認
の義務が発生することになり、その負担はかなり大きいものと思われる。
○ 登録者自身も自分が登録している期間中に発生した事態に関しては、意思表示
の問い合わせに返答する利用者責任はあると思う。意思表示ができないことに関
しては、場合によってはやむをえない事情があることも考えられるが。
◎ 運転免許の場合などのように、期間中に対応できずに一旦は取り消しとなった
ものについて、リカバリー可能な期間や手段を設ける等の対応もありうるのか。
この点については、現状ではどうなっているか。
● 一旦廃止されたドメイン名は、廃止後一定の凍結期間はあるが、そのまま元の
登録者のドメイン名として復活するということはない。現状では、凍結期間終了
後に改めて先着で登録を行うという形になっている。
ただし、元の登録者による取り直しのケースについては、なんらかのリカバリー
対応について、別途検討を進めている。
◎ 通常の権利関係のなかで、いかにして登録者の権利期間を延長をするかという
問題になると思う。できる限り登録者を保護する必要はあるが、現実的には管理
コストもかかり、それが結局はJPドメイン名の登録者全体の負担になっていく部
分もあり、どこまでが公平であり、合理的であるかということを考えなくてはい
けないだろう。
● 自動車免許などとは異なり、ドメイン名は個別に唯一なものなので、他の登録
者が新たに登録を行った後で、元の登録者の権利が復活するという場合にどうい
った対応を取るべきかは難しい問題。適切な落としどころを見て、全体的なコス
トを勘案しつつ検討する必要がある。
◎ 意思表示期間中の連絡不可能性については、現実的には、ドメイン名の継続利
用の意思がある登録者がある程度の長さを超える期間中、メールも全く使えず連
絡も取れないということがあるのか、ということも言える。
また、先ほどご指摘があった件として、当該ドメイン名の本来の登録有効期限と
意思表示期間のいずれが先に終了するのかという問題もある。あらかじめそのよ
うに定めておけばよいのかもしれないが、場合によっては、結果として登録期間
が短縮されてしまう可能性もあり、こうしたことにも配慮が必要だろう。
○ 登録有効期限と意思表示期間については、実装の問題だと思う。
むしろ、問題は、登録者から移転の意思表示がなかった場合に、一旦JPRSの指定
する指定事業者に移す場合に、余分なコストが発生するということに還元される
だろう。
意思表示を行うだけで自動的にドメイン名が他の指定事業者に移って、それまで
の継続ということであれば、ドメイン名の利用に関しては登録者にとってのコス
トはほとんど変わらないはず。その際に、極端にコストが高くなる/低くなる、
などということがあれば問題だが、個別のコストの上下については、指定事業者
の選択のなかで登録者自身にカバーしてもらうしかない。
◎ 資料中にもあるように、登録者にとっては他のサービスの利用が重要である
ことが多いので、JPRSの指定する指定事業者に移転する場合、連絡が取れて納得
していただければ特に問題はないが、やはり連絡が取れないと困る。とはいえ、
そのまま登録を維持するというのも明らかに合理的ではない。
○ 法的な部分の詳細については、本日ご欠席の松本委員にもご意見を伺いたいが、
登録者と指定事業者の間に契約関係がある状態で、指定事業者が契約関係を維持
できなくなった際に、指定事業者にかわってレジストリが事態を収拾する場合、
登録者から意思表示がないまま一定の期間を経過したときに、法的に問題がない
形でどこかで区切りをつけるべきだと思う。そのうえで、登録者の側に事故等何
らかのやむをえない事情があってどうしても連絡がつかないといったケースをカ
バーできれば充分ではないか。
◎ 区切りをつけるべき期間について、常識的な範囲はあるだろう。
● そうした区切りとしてどのくらいの期間が妥当かについては、弁護士などにも
相談している。この問題については、背景を含めて松本委員にもご意見を伺って
おきたい。
◎ 諮問事項のもう一つのテーマとして、登録者本人からの意思確認がなく、指定
事業者から廃止届けがある場合については、資料中にあるように、現状ではドメ
イン名の種類によって複数の廃止手続き方法がある。
複数の廃止手続き方法があるために、意思確認が二重になってしまい、これはあ
る意味手厚い確認方法だが、一方で登録者の側にも負担となっており、この手続
きを一本化するかどうかが検討のポイントとして挙げられている。
○ どういったいきさつで複数の廃止手続き方法が存在しているのか。
● JPドメイン名にはもともと属性型・地域型しかなく、手続きの方法は一種類で、
(A) 属性型・地域型ドメイン名では、登録者が明示的に意思を表明してレジスト
リに書類を提出する、という形をとっていた。
その後、登録者の意思確認ができず、レジストリへの書類提出も困難な場合があ
り、手続き的に問題が発生するというという指摘が指定事業者からあった。これ
に対応するため、(B) 属性型・地域型ドメイン名でも、意思確認書類なしに指定
事業者が廃止手続きを行えるような手順を整えた。
一方で汎用ドメイン名が新設され、汎用ドメイン名については指定事業者の役割
を明確化し、(C) 指定事業者が登録者の意思確認を行うことを前提に、レジスト
リは登録者の書類提出を求めることなく手続きを行う、ということを明示的に定
めた。
今述べた3つの手続きのうち、(A)と(C)は共に廃止の意思が明確化されている。
しかし、(A)ではレジストリへの書類提出が必要であるのに対して、(C)の手続き
ではレジストリへの書類提出が不要、という違いがある。
本来であればこの2つの手続きは一本化すべきではないか、というのが今回ご相
談させていただきたい修正案の内容となっている。つまり、現在登録者に対して
指定事業者から行っている2種類の意思確認の手続きを一本化し、3つある手続
きを2つにするということになる。
◎ 多少歴史的な経緯から、かつての手続きが残っており、後から汎用ドメイン名
が開始されたので、今回新しい手続きに一本化するという案なのか。
● その通り。
○ すべてのドメイン名の廃止手続きに関して、(B)と(C)の手続きを行うというこ
とか。
◎ 汎用JPは属性にあるような書類の有無という区分がなく、指定事業者が登録者
の状況をみて必要に応じて廃止の手続きを行うことになっているので、(A)と(C)
の手続きを統合した後の状態としては、属性型・地域型ドメイン名については(B)
と(C)、汎用ドメイン名については(C)の手続きのみが存在することになる。
この手続きの問題は、つきつめれば登録者と指定事業者とレジストリの三者の、
契約関係の中での位置づけの問題に関わってくるため、一旦は運用上の規定で(A)
と(C)の一本化を行い、その後契約関係についての本質的な検討を行いたいと考え
ている。
○ 汎用ドメイン名では、指定事業者が登録者の意思確認ができないケースは存在
しないのか。
● 汎用ドメイン名の場合は、指定事業者が責任をもって手続きをするということ
が本来的に定義されているので、登録者に連絡が取れなくなるなどの場合には、
登録者に対しても、あらかじめ指定事業者からレジストリに対して廃止手続きを
行うという契約をしている。
属性型・地域型ドメイン名の場合は、もともとその定義がないために、指定事業
者が登録者とそうした取り交わしをしていない場合が多い。その結果、登録者が
消滅して連絡不能になると、指定事業者は廃止手続きが不可能になる。そのため
に(B)の手続きを設けた。
◎ いままでの経緯もあり、契約そのものを大幅に変更することが現実的でないと
すれば、廃止についての取り扱いを合理的に修正するのが妥当だろう。現在は、
資料4の答申骨子(案)のような表現になっているが、本日ご指摘頂いた事項やご
意見を事務局でまとめたうえで、委員の皆様には別途連絡して、答申をまとめる
までにもう一度なんらかの方法でご意見を頂いて、次回答申を行いたい。
資料4「答申骨子(案)」を元に、答申案を継続審議する旨が合意された。
《JPドメイン名の登録管理業務における公平性・中立性について》
◎ 本議案に関しても、前回委員会で説明、意見交換を行った。諮問事項ではない
が、JPドメイン名の登録管理業務における公平性・中立性を保証するもののひと
つとしてこの委員会も存在しているので、この場でご意見を頂いて方向性につい
て合意することは重要であると考える。
まずは、前回までの議論およびそれに基づいた提案につき、事務局よりまとめて
ご説明をいただきたいと思う。
● 前回の議論としては、「ドメイン名の登録管理業務はインターネットコミュニ
ティからの信託と公共性に基づいて実施している」という基本原則の中で、主に
以下の4つの言葉の定義についてご検討頂いた。
「公益性」:インターネットコミュニティ全体の利益
「公共性」:特定の集団に限られることなくインターネットコミュニティ全体
に利害・影響をもつ性質
「中立性」:登録者や指定事業者(会員)に対して中立な立場。
方針策定の neutrality
「公平性」:登録規則に基づいた業務。登録者や指定事業者に対して(規則に
基づいて)同等に扱う。日々の業務の fairness、equitability
の維持。
前回の委員会では、これらの言葉についての歴史的意味合いは概ね以上のような
ものであるとの認識がなされたが、その後、委員の皆様のご意見を反映し、事務
局でも検討を行った結果、それぞれの用語について見直しと具体化を進めた。
「公益性」:公共性、中立性、公平性の実現を目指すことを通じ、JPドメイン
名全体の公益性を向上させ、インターネットコミュニティの健全
な発展に寄与
「公共性」:JP DNSやレジストリデータベースの安定的運用、利用者や指定事
業者に対する適切な指導・助言
「中立性」:中立性:登録者や指定事業者に対し中立な立場での方針策定。諮
問委員会への諮問、答申への対応
「公平性」:登録規則に基づく、登録者、指定事業者に対する業務遂行。諮問
委員会への諮問、答申への対応
公益性については、一番抽象的な内容となるため、公共性・中立性・公平性とい
う他の3つの実現をはかることがすなわち公益性の実現につながる、という考え
方のもとにまとめている。
これらについてJPRSとしてどうやってより具体的に考えるかについてご検討をお
願いしたい。現在、その具体化と実現の一環として、まずはJPドメイン名レジス
トリとしての取り組みに関する方針文書のようなものを作成し、これをなんらか
の形で公開したいと考えている。この方針文書をもってインターネットコミュニ
ティに対してこれを約束し、さらにこれに基づいて日々の業務を行うことで、公
平性・中立性などの実現をはかっていきたい。
取り組みに関する方針としては、現在次のようなものを考えている。
まず、JPRSがレジストリとして行うべき業務を明確に定義し、JPドメイン名登録
管理データベースの運用管理・JPドメイン名レジストリが管理するJPドメイン名
登録規則の策定・国際的な関連組織との協調・JPNICと協調したJP-DRPの運用、な
どのレジストリ業務に関して公平性・中立性を維持していくことを示したい。
そして、公共性・中立性・公平性のを実現することが公益性の向上とインターネ
ットコミュニティの健全な発展に資するという観点から、まず公共性・中立性・
公平性の概念を定義し、それぞれに対してより具体的な取り組み方針を示して、
その実現を目指すことを明示していきたい。
公共性の実現のための具体的な取り組み方針としては、
- 利用者や指定事業者への情報提供や指導・助言による、サービス品質の向上
とJPドメイン名の信頼性・安定性・利便性の向上
- 必要な技術の保持、最新の動向把握した技術開発による技術の向上による、
国際的な連携の中でのリーダーシップ
- ICANN、各ccTLD、およびその他関連組織との連携による、国際的なccTLDレジ
ストリポリシーの整合性の維持
- 必要なサービスを中断なく提供することによる、サービスの信頼性向上
- 法令・スポンサ契約に基づくポリシー等の遵守による、公的な責務の遂行
- 指定事業者との連携・健全な財務体質維持・決算時計算書類のJPNICへの報告
による、JPドメイン名サービスの信頼性・安定性・利便性の維持体制の構築
- レジストリデータのバックアップ・エスクローなどのデータ保全による、レ
ジストリデータベースの安全性と完全性の保証
- JP-DRPを採用とJPNICとの協調運用による、秩序あるJPドメイン名空間の実現
などが挙げられる。また、中立性に関する取り組みとしては、
- 登録規則の変更時におけるインターネットコミュニティの意見聴集による、
意見の登録規則への反映
- 登録規則の変更やレジストリデータベースの運用管理に関する重大な事項に
関する情報公開
- JPドメイン名諮問委員会の設置と、登録規規則・指定事業者の選定および契
約終了に関する基準等に関する諮問、諮問結果およびその対応に関するJPNIC
への報告
これらの実施によって、JPドメイン名登録管理業務の方針策定に関する登録者や
指定事業者に対する中立性を考慮すること、また、適切な情報の公開・開示によ
る、ドメイン名登録情報公開の原則と個人情報の保護のバランスの維持などをは
かりたい。
公平性に関しては、日々の適切な業務遂行と、必要に応じた諮問委員会への諮問、
および結果とその対応に関するJPNICへの報告などのなかで実現を目指したい。
概ね以上のようなものを基本方針として策定し、公開して社会的に約束したいと
考えている。
○ 前回の委員会で、社会の趨勢として企業でもコンプライアンスプログラムを作
成して実施していくことが求められているとのコメントをしたが、これに対して
こうした方針文書の策定が行われることは非常に歓迎できる。こうしたキーワー
ドに基づいて業務を遂行するということで、組織および業務に対する信頼性を高
めることになると思う。
ただ、付け加えるとすれば、こうした基本方針を公開すること自体が透明性の確
保に繋がるのであれば、どこかに明示的に「透明性」という概念も盛り込んだほ
うがよいのではないか。
また、「情報公開の原則と個人情報保護のバランスをとる」という表現は個人情
報保護が犠牲になる場合があるという誤解を生む。情報公開のために個人情報の
保護が犠牲になるというようなことはあってはならないので、むしろ、いずれも
実現をはかっていく、と言うべきだろう。
○ 公益性の定義に関して、インターネットコミュニティの利益とは何を指すのか。
インターネットコミュニティの利益をどう測るのかという指標がないと、JPRS自
体が正しい方向に向かっているということを明示できないのではないか。
● 「インターネットコミュニティの利益」については、事務局でも、そもそもイ
ンターネットコミュニティとは何か、あるいは、定義したとして利益を受けるの
はインターネットコミュニティだけでいいのかという部分についての検討を行っ
ている。
時代の変化によって、現在ではインターネットコミュニティが場合によっては利
用者全体を含むこともありうるということで、以前よりインターネットコミュニ
ティが指している対象は広がっていると思う。
さらに、その「利益」としては、公共性・中立性・公平性について具体的なアク
ションを示し、これを実行することがすなわち公益性をであるという形で考えて
いる。
○ 利用者というのが誰を指すのかも明確ではない。利用者=エンドユーザのこと
だとしても、それが国内のユーザなのか海外のユーザも含むのか、ドメイン名の
ユーザだけなのか、携帯電話のユーザまで含むのか、といった疑問がある。具体
的な取り組みの中で「利用者への情報提供」が挙げられていたが、具体的には、
誰にどういった情報を提供するのか。
● 当初は、利用者ではなく登録者を対象として考えていた。登録者と指定事業者
には一番最初にサービスを提供することになるが、たとえば、インターネット全
般の利用者や、DNSサーバーを運用・管理者などにも情報提供をしないと、JPドメ
イン名およびJPDNSの運用全体の向上にはならないだろうと考えている。そこで、
対象を広げて考える方向になった。
そうしたドメイン名の登録者以外の利用者に対して、JPRSが現在具体的に行って
いる内容としては、たとえば、DNSサーバの運用・設定の方法に関する情報公開や、
JPNICやWIDEなどの組織と協力して、どういったDNS設定をすればいいのか、など
の情報提供も行っている。
また、さらにICANNやccTLDなど国際会議などでのDNS技術のチュートリアルなど含
め、広い意味での適切な情報提供をミッションとして持つべきだという姿勢を示
してこれを遂行することもレジストリとしての重要な責務と考えている。JPドメ
イン名の国際的な注目を考えると、ここで果たすべき役割も大きいと認識してい
る。
こうした部分も含めて多岐にわたる情報提供活動を考えているが、ここではあま
り限定的ではない形で述べさせていただいている。
○ このような理念を明確にしておくことは良いことだと思う。
ただし「公共性」という言葉の使い方については気になる部分がある。ここでは
「特定の集団に限られることなく」という形で用語が定義されているので、その
限りにおいては問題ないが「公共性」には法的な部分で別の意味合いがある。
いわゆる「公益事業」としては、NHK・JR・NTT・電力やタクシー会社などの事業
はすべて公益事業であると言える。しかし、そのすべてが「公共事業」ではない。
たとえば、NHKの場合には、放送法とは別途NHK法が存在し、なおかつ株式会社で
もないため、これは公共事業にあたる。一方、個別の法律が存在せず、法的に定
義されていないものについては、公益事業ではあるが公共事業ではない。
その意味で、「公共性」という言葉の使い方には注意が必要だろう。いわゆる
「公共事業」を行う公共事業体には、一般にさまざまな規制や保護があり、JPRS
の事業は、言葉の一般的な意味では公共的だが、こうしたものにあたるかという
とまた問題は異なってくる。
● いわゆる「公共事業」であれば然るべき取り扱いがあり、そうでなければ「公
共性」という言葉は避けたほうが良いのではないかといったご指摘は、何人かの
法律家の方からも受けている。
ただ、歴史的経緯として、JPドメイン名の登録管理業務に関しては、JPNICで行っ
ていた時代から「公共性」という言葉を使ってきた経緯もあるので、法律的な意
味での「公共性」との関係の中でどういったバランスを取るかということについ
ても議論していきたい。
◎ 抽象的なことから具体的なことまで多岐にわたる内容なので論点は尽きないが、
引き続きご意見を伺っていきたい。具体的には文言として公開するということが
提案されているが、その内容と方法も含めてご意見があれば引き続きお願いした
い。
JPドメイン名の登録管理業務における公平性・中立性につき、委員会にて継
続して審議を行う旨が合意された。
《その他》
◎ なお、用意された議題は以上だが、本日ご欠席の潮田委員より、社内での役割
が変わられたため、委員の継続に関してご相談を頂いている。潮田委員は、委員
会設立時に経団連からのご推薦を頂いてご就任いただいた経緯があるため、必要
に応じて経団連と相談等をしながら、後任の委員候補の選定をするかご継続をお
願いするかするかなどを含めて、ひとまず委員長と事務局で進めていきたい。
◎ 次回の委員会は2004年2月の定例委員会を予定しているが、本日の第1議題の答
申を行う予定。委員各位には、それまでに本日の議論を反映したものをお送りし
て、再度ご確認をお願いしたいと考えている。具体的な進め方は随時ご相談して
参りたい。
◎ これにて本日の議案を全て終了し、第7回JPドメイン名諮問委員会を閉会する。
《閉会》
以上