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JPRSがICANNに対し、「リファレンス用セカンドレベルに対する日本語ラベル生成ルール」に関する意見書を提出
2017年6月16日、JPRSは、ICANN(Internet Corporation for Assigned Names and Numbers)のPresident and CEOであるGoran Marby(ヨーラン・マービー)氏に対して、ICANNが作成を進めている「リファレンス用セカンドレベルに対する日本語ラベル生成ルール(Reference Japanese Label Generation Rules (LGR) for the Second Level)」に関する意見書を提出しました。
提出した意見書は、2017年4月28日に、ICANNスタッフがパブリックコメント募集[*1]の際に提出された意見などを踏まえて作成したスタッフレポート[*2]の内容に対するもので、主に「視覚的に類似(visual similarity)」に関する意見となります。
今回の意見書提出は、JPRSが「日本語ドメイン名」を扱うレジストリとして、ICANNと日本のコミュニティの協力の一環となることを目的に行うものです。
■参考
- *1. パブリックコメント募集/Public Comment:Reference Japanese Label Generation Rules (LGR) for the Second Level
https://www.icann.org/public-comments/japanese-lgr-second-level-2017-01-27-en - *2. スタッフレポート/Staff Report: Reference Japanese Label Generation Rules (LGR) for the Second Level
https://www.icann.org/en/system/files/files/report-comments-japanese-lgr-second-level-28apr17-en.pdf
■意見内容概要
○「スタッフレポート」の要旨
- 日本語には、リファレンス用ルール(案)で異体字としている「ー/一」「ヽ/丶」のほかにも、類似した文字(※)がある
※ カ/力、オ/才、ロ/口、ハ/八、ト/卜、ニ/二 or エ など - 類似文字について、リファレンス用ルールの「説明セクション」に掲載することが可能である
- 「説明セクション」に掲載することは、正式な異体字として定義することではないが、掲載によって、各レジストリはこれらの類似文字に留意し、ユーザーへの影響を低減するための選択を適切に行うことができるようになる
- 最終化のために、この変更について、ステークホルダー、特に日本コミュニティとの議論を行う
○JPRSの意見
-
文字の「視覚的類似」は他の言語にも存在(※)しており、特定の言語における問題と捉えるべきではない
※ 1(数字)/l(小文字エル)、0(数字)/O(大文字オー)など - 日本語JPドメイン名では、すべての文字、文字列は独立して扱うものとして15年以上運用してきた実績と経験がある
- ドメイン名に使用する文字は、DNSの安全性、安定性を損ねることなく、登録者の希望を尊重することが可能であると考える
- 「説明セクション」であっても、リファレンス用ルールに「視覚的類似」を掲載すべきではない
- 文字の「視覚的類似」には、アプリケーションやDRPでの「ドメイン名利用時」のコントロールで対処すべきであり、「ドメイン名登録」で解決すべきではない
JPRSの提出意見
16 June 2017
Goran Marby Dear ICANN President and CEO Goran Marby, We appreciate the efforts ICANN has been and is facilitating the development of Reference LGRs for the second level. Please receive input from a registry that deals with Japanese IDNs, as part of the cooperative work between ICANN and Japanese community mentioned in the last paragraph of the staff report[1] posted on April 28 2017. [1]https://www.icann.org/en/system/files/files/report-comments-japanese-lgr-second-level-28apr17-en.pdf First, please note the background why we did not post our comments to the second public comment invitation[2]. We considered the then-proposed LGR had some issues from the viewpoint of Japanese community but was acceptable as a reference LGR to gTLDs in general, because reference is a reference, and sensible deviation from it is allowed. For example, some modern notations are not allowed by the proposed LGR, but they will be allowed in some TLDs. [2]https://www.icann.org/news/announcement-2017-01-27-en Secondly, we'd like to comment on introducing visual similarity into domain registration rules. The Google Registry states that the limitation of registration of labels with visually similar Japanese characters may reduce the risk of user confusion. If ICANN seeks to deal with visual similarity at the level of domain name registration rules, it is needed to (re)visit LGRs of all the languages to see whether visual similarity is well-considered. That is, visual similarity is not the matter of specific languages. In addition, there is no well-established definition of visual similarity, including homoglyphs. We think it is disastrous to all the whole LGR space if ICANN introduces the concept of visual similarity to the LGR. Thirdly, let us refer to the substance of Google Registry's comments. Japanese community has been using Japanese IDNs under .jp for more than 15 years. Over 110 thousand Japanese IDNs are currently registered and used. The rules of Japanese IDNs were developed based on the consultation with Japanese community. All the allocatable characters and labels are regarded as independent and no variants are defined. That is, no matter how label1 and label2 are visually similar, the domain name registrant of each label has equal rights about the domain name and registrant of label1 does not have the right to block the registration and usage of label2. 15+ years' experience has shown us that each character and each label in Japanese repertoire has its firm identity and Japanese users can manage the situation well. Based on the above background, we believe that the wishes and intentions of the registrants regarding the selection of characters and labels can be respected without disrupting the security and stability of DNS. Therefore we opine that ICANN should not recommend registries to block domain name registration of label2 on the grounds that label2 looks visually similar to label1 that has already registered as a domain name. In order not to be recognized that domain labels with any visual similarity should be avoided, we oppose to introduce visual similarity as variant into the reference LGR even in the description section. If coping with visual similarity is needed, it should be controlled in the domain name usage sphere and be handled by applications or DRP, not by blocking domain name registration. Sincerely,
Koki Higashida, |
JPRSの提出意見(日本語参考訳)
2017年6月16日
拝啓 Goran Marby様 リファレンス用セカンドレベルに対する日本語ラベル生成ルール(Reference Japanese Label Generation Rules (LGR) for the Second Level)開発促進に関するICANNの努力に我々は敬意を評する。2017年4月28日付スタッフレポートの最終段落で述べられているICANNと日本コミュニティの協力活動の一つとして、日本語ドメイン名を扱っているレジストリからインプットしたい。 最初に、我々は、第2回パブリックコメント募集においてコメントを出さなかった背景を述べたい。我々は、提案されたLGRは日本のコミュニティの観点からいくつかの問題があると考えていたが、リファレンスはリファレンスであり、理にかなった派生は許容されるものであるという理由から、概してgTLDに対するリファレンス用のLGRとして受容可能であると考えた。例えば、提案されたLGRではいくつかの現代的な表記方法を許可しないが、いくつかのTLDでは許可されている。 二点目に、視覚的類似性をドメイン名登録ルールに導入することについて意見を述べたい。Google Registryは、視覚的に類似する日本語文字を含むラベルの登録の制限が混同リスクの減少に寄与する可能性を言及している。ドメイン名登録ルールのレベルで視覚的類似を扱おうとするのであれば、ICANNは視覚的類似を全言語に対して十分考慮しているかを再調査・検討する必要がある。すなわち、視覚的類似は、特定の言語における問題と捉えるべきではない。更に、ホモグリフも含めて視覚的類似が明確に定義されているわけではない。LGRに視覚的類似を組み入れることは、全LGR空間に大きな悪影響を及ぼすと考える。 三点目に、Google Registryのコメントの内容について述べたい。JPコミュニティは、これまで15年間以上、日本語IDNを利用してきた。現在も.jpには11万を超えるドメイン名が登録され使用されている。JPドメイン名での日本語のIDNのルールは、日本のコミュニティのコンサルテーションを基にした検討の結果であり、登録可能なすべての文字、すべての文字列は独立して扱われるものとしており、異体字は定義されていない。つまり、label1とlabel2という文字列間に、見た目の視覚的な類似があるとしても、それぞれに対する登録者の権利は同等に存在し、label1の登録者にlabel2の使用を妨げる権利はないとしてきた。 このレジストリ運用経験の中で、日本語のレパートリーに含まれる文字はそれぞれが確固としたアイデンティティーを持っており、すべてが独立した文字として使われていることを見てきた。 このような背景から、我々は、DNSの安全性、安定性を損ねることなく、登録者がどの文字を用いるか、その希望・考えが尊重することが可能であると考える。 それゆえ我々は、ICANNが、既にドメイン名として登録されたlabel1とlabel2が視覚的に類似していることを理由に、label2のドメイン名の登録を阻むことをレジストリに推奨すべきではないと考える。 視覚的に類似した文字は登録を回避すべき対象であるかのような誤解を招くことにつながるため、「説明セクション(the description section)」であっても、視覚的類似文字を異体字として定義することに言及すべきでない。視覚的類似文字への対処が必要な場合は、それはアプリケーションやDRPでのドメイン名利用時のコントロールとして捉えるべきであり、ドメイン名登録で解決しようとすべきでない。 敬具
東田幸樹 |
■参考
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○LGR(Label Generation Rule)
- 使用できる文字の一覧(repertoire)
:Unicodeのコードポイントの集合として定義する - 使用できる各文字に対する異体字の一覧(variants)
:使用できる各文字のUnicodeコードポイントに、0文字以上の異体字のUnicodeコードポイントを紐付ける - 各異体字の取り扱い(variant type)
:異体字を含むラベルのゾーンでの取り扱い(委任可/allocatable、委任不可/block、申請不可/invalidなど)を定義する - 文字列(文字の組み合わせ方)の評価ルール(Whole Label Evaluation:WLE)
:特定の文字の文字位置に関する制限や、複数のvariant typeの組み合わせの制限などを定義する
ある言語もしくはスクリプト(用字)でレジストリがIDNラベルを定義する際に参照される、以下四つのルールを決めたもの
○ルートLGR(ラベル生成ルール)
example.TLD
:IDN TLDに用いる文字のルールを規定
○リファレンス用 セカンドレベルに対するLGR(ラベル生成ルール)
ドメイン名.hogehoge
:セカンドレベル以下のドメイン名に用いる文字のルールをリファレンス(参照)用として規定